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2014年05月02日

日米安保条約第5条

久しぶりですがGWで時間をもてあましていたので書いてみました(*^_^*)

先日の日米首脳会談で安部さんはオバマ大統領から「尖閣は日米安保条約第5条の適用範囲である」との言質を引き出しましたね!
これについて安部さんは自画自賛ともとれる発言していますし、読売・産経など右系のマスコミの論調もこれは日本の外交・安保にとって大変大きな成果を上げたぞ~!みたいなものですが!?

このような評価について僕は疑問ありありですね~
ただその一方で、安部さんのことが嫌いな左翼の人たちが異口同音に「そんなことは、ヒラリー(元国務長官)もヘーゲル(国防長官)も言っていた周知の事実で、オバマの単なるリップサービスに過ぎない」と批判しているのにもはなはだ疑問です。
と言うのも、単なるリップサービスだとしても大統領と他の人が言うのとではその差が歴然ですし、これについて中国が即座に反発したことを思えば、外交・安保上のインパクト、中国に対する日米安保の抑止力が働いたことは明らかだからです。

正直僕も安部さんは嫌いですが、だからと言って「嫌い」の勢いを買って安部さんを批判するような浅薄な議論はしたくありません。なぜなら僕の安部さんに対する評価は、知識が浅はかで薄っぺらい議論をする人、まさに「浅薄」そのものだからです!
批判するにしても好き嫌いの感情が支配した浅薄なものではなく、事と次第をきちんと把握し、その中身を十分に吟味し、それに基づいて議論を深く掘り下げることこそが大事だと思っています。

で、ここからが本題なのですが、今回のオバマの発言でどうやら安部さんも多くの日本人も「中国が尖閣に攻めてきたらアメリカ軍は自衛隊と一緒に戦ってくれる」と思っているようですが、それはホントでしょうか?

オバマの首脳会談後の記者会見で発言を振り返ると、日本の施政権下(日本が実質的に管理している)にある尖閣を日米安保条約第5条の定期用範囲だとは明言しましたが、領有権(どちらの国の領土かということ)については日本・中国二国間の問題だとして従来の姿勢を崩しませんでした。

また「中国が尖閣に攻めてきたらアメリカ軍は即座に自衛隊と一緒に中国と戦うのか?」というアメリカ人記者の質問に対しても、それには答えず日本と中国が仲よくすることが大事だと答えるにとどまりました。

一方で、尖閣は日米安保条約第5条の適用範囲だと言いながら、也方で中国が攻めてきたら自衛隊と一緒に戦うとは明言しない!?

安部さんや多くの日本人の考えが正しいとしたら…違和感ありますよね~

この違和感を解消するためにはまずは事と次第をきちんと把握すること!
まずは、日米安保条約第5条には何が書いてあるか紐解いてみます↓

*********************************
第五条(共同防衛)
1.各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
2.前記の武力攻撃及びその結果として執った全ての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。
*********************************

一見すると、安部さんが言うように何かあったらアメリカ軍は尖閣を守ってくれる、と思ってしまいそうですが…そう単純な話ではありません!

ポイントは1項の「自国の憲法上の規定及び手続に従って」という記述です。
日本は憲法上の集団的自衛権は行使できないので、アメリカが他国から攻められたとしても自衛隊は応援することは出来ないということは周知の事実ですが、アメリカだって戦争をするのはそんな簡単ではないのです。
アメリカの戦争は、合衆国憲法においてそれをするかどうかの判断は連邦議会に委ねられているので原則的に議会の承認が必要なのです。

ただそれだと国際紛争の緊急事態に対応できないので連邦議会は「戦争権限法」で48時間以内の議会への報告と60日以内の議会承認の取ることを条件に大統領に対して戦争をする権限を与えているので、その限りにおいては少しばかりですが尖閣についてアメリカの力を期待できるかもしれません。

でもオバマはそこには言及しなかったんですよね!?

そう言えば、シリヤのアサド政権が化学兵器を使った証拠があるからシリヤを攻撃するとあれだけ国際社会に表明しておきながら、オバマはあとで議会の承認を取れないと判断するや否やシリヤへの攻撃をやめてしまったのはつい半年も前のことです。

次に、何か事が起きたとき日米が安保条約に基づいてどう協力するかは「日米防衛協力のためのガイドライン」に定められていますが、そこに島しょ地域の防衛については第一義的に日本だけで行うとされているのです。
つまりガイドラインでは中国であれどこの国であれ外国が日本の離島に攻めてきたときはまずは日本だけで防衛を行うということになっているのです。

どうやら思っていたよりアメリカは日本を守ってくれそうにありません。

次に同じ安保体制でもアメリカが日本以外の国々とどういう内容の条約を結んでいるのかも気になりますよね!
最も有名なところでNATO(北大西洋条約機構)がありますが、その条約の条文にはこんなもの日米安保第5条にあたるこんな記述があります↓

*********************************
第5条(集団防衛)
欧州又は北米における一又は二以上のの締約国に対する部武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなす。
締約国は、武力攻撃が行われたときは、国連憲章に認める個別的または集団的自衛権を行使して、北大西洋地域の安全を回復し及び維持するために必要と認める行動(兵力の使用を含む)を個別的に及び共同して直ちにとることにより、攻撃を受けた締約国を援助する。
*********************************

日米安保条約との大きな違いはどこか分かりますか?
そうです!それぞれの憲法の制約を受ける日米安保条約と違って、条文に「直ちに」と記述があるように北大西洋条約で締約国はそれぞれの憲法の制約は全く受けず即座に行動が出来るようになっているのです。

NATOと日米安保の差は歴然!いよいよ安部さんの話は怪しくなってきました。

事と次第の把握をこれくらいにして、これらを吟味するとこんなケースが想定出来るかもしれません…

中国が尖閣に攻めてきた。

日本はそのうちアメリカの応援があると期待しつつもガイドラインに基づいて第一義的に自国だけで防衛行動をとった。

しかし、日本の防衛予算の4倍もある中国の軍事規模は圧倒的に大きく瞬く間に尖閣を占領されてしまった。

それでも日本はアメリカの応援があり次第再び尖閣を奪還するつもりだったが、アメリカはこんなことを言ってきた。

中国の占領によって尖閣の施政権はすでに中国に移っており、その時点で尖閣は日米安保第5条の適用範囲外になってしまった。
よってこの紛争にアメリカの軍隊を出す協力は出来ない!… と

中国が尖閣に攻めてくることも含めて実際起こり得ない話ですが、オバマが尖閣は日米安保条約第5条の適用範囲だと明言しつつも、アメリカ人記者の「中国が尖閣に攻めてきたらアメリカ軍は即座に自衛隊と一緒に中国と戦うのか?」質問に対して何も答えなかったのは、前述した想定オバマの頭の中に広がっていたからだと考えるのはあながち間違っていないと思うのですが…

ilovesun☼

日米安保条約第5条



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